交通事故でむち打ちになったら

【むち打ちとは】

むち打ちは英語では「Whiplash(ウィップラッシュ)」と呼ばれており、その名の通り外から強い力が加わったときに首がむちを打つようにS字状にしなることで受けたダメージから起こる様々な症状をひっくるめて俗に「むち打ち」と呼ばれています。傷病名では外傷性頚部症候群や頚部捻挫/挫傷となります。首は頭と胴体をつないでおり、脳幹の一部や脊髄や神経、脳に繋がる血管などが詰まった非常に重要な部分です。ボーリングの玉ほどの重さのある頭を支えていることから、交通事故やスポーツなどで身体に外から大きな力が加わった時には、構造的に非常にストレスがかかりやすい部分でもあり、大きなダメージを受けてしまいます。

【むち打ちの症状】

むち打ちによって現れる症状は多岐にわたります。もっとも多いのは首周りの痛みや動きの制限、肩こり、倦怠感や頭痛などで、腕を支配する腕神経叢にダメージがあれば手に痺れを感じたり手に力が入らなくなる場合もあります。痛みでも少し重だるくて痛いくらいの場合もあれば、あまりの痛みで首を全く動かすことが出来ず、カラーと呼ばれる首回りを固める補助器具がないと生活が出来ないような状況になる方もいます。その他の症状としては目眩や難聴、吐き気、耳鳴り、目のかすみ、ちらつき、顎の痛みなどもあります。またこれらのように分かりやすい症状だけではなく、むち打ちで急激に揺さぶられることで脳がダメージを受け、感情コントロールの低下や注意力や判断力の低下、もしくは人格が変わってしまうなどといった高次機能障害を誘発する恐れもあります。また稀ではありますが、脳脊髄液が漏洩することによって起こる脳脊椎液減少症を発症することもあります。むち打ちはこのように肉体的な痛みや痺れだけでなく、場合によっては脳へのダメージによって人格障害や鬱病などを引き起こすこともありうる怖いものです。

【交通事故にあったら】

またむち打ちが怖いのはこのような症状が事故後すぐに起こるとは限らないということです。実際にクリニックにいらっしゃった患者さんでも、事故直後には特に問題がなかったのに3日後の朝に急に首が痛み出して全く首が動かなくなったという人もいますし、交通事故の後遺症でいろんな整形外科やカイロ、鍼灸などに通ったものの「もうこれ以上は治らない。」と言われ、身体の体勢を変える時に常に首を手で支えないといけない生活を25年も続けていたという人もいます。また脳の機能障害は場合によっては非常に分かりにくいもので、例えばMRIやCTスキャンで脳の画像をとっても何の異常もなくても後遺症に悩まされているというケースも存在します。もちろん画像を撮ってまず目に見えるような異常が脳にないかを確認することは大切ですが、画像では正常でも何らかの症状に悩まされている場合であれば、脳の機能的な問題を検査することの出来る機能神経学に精通したドクターに診てもらうことをお勧めします。

またルール上では交通事故にあってから
2年間は事故の後遺症がある場合に自動車保険適応で医療機関での診察を受けることが出来ますが、実際には事故が起こってすぐに医療機関にかかっていない場合は保険会社が事故と症状との関連性を認めようとしない場合が多くあるので、交通事故にあった場合にはその時には大して身体に痛みがない場合でも大丈夫だと過信せず、出来るだけ早く医療機関での診察を受けられることをお勧めします。

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