痛み止めについて考えてみる

NSAIDsとは?

NSAIDs (= Non Steroid Anti Inflammatory Drugs) とは非ステロイド系坑炎症薬のことで、痛み止めや風邪をひいたときなどに利用している人も多いかと思います。よく薬の飲みすぎは身体に悪いと聞いたことがある人は多いと思うのですが、処方箋ならともかく簡単に手に入るOTCの薬の危険性を本当に理解している人は少ないのではないでしょうか?もしくは簡単に手に入るのだからそんなに副作用もなく安全なのだろうと思っている人も多いかもしれません。ちなみにOTCとはOver the Counterの略で、医師の処方箋なくCVS等のドラッグストアなんかで簡単に手に入る医薬品のことを指します。

まず簡単にアメリカでよく見かける痛み止め、風邪薬を中心にNSAIDsの分類などを説明したいと思います。

アメリカで簡単に手に入るOTCでは、AdvilMotrinなどはイブプロフェンが、Aleve Midolなどではナプロキセンという成分が主成分のNSAIDsです。NSAIDsの代名詞ともいわれるアスピリン(Aspirin) はアセチルサリチル酸を主成分にしたサリチル酸系のNSAIDsです。


NSAIDsの副作用

アメリカでは年間でおよそ10万人NSAIDsの副作用による消化器官系の症状のために入院し、16,500ほどが死亡しています。これは毎日満員のジャンボジェット機が墜落して乗客全員が亡くなり続けるのと同じ人数です。薬剤が原因の救急患者の約43%NSAIDsによるものとも言われています。最も多い副作用は胃腸炎ですが、より深刻なものでは胃に穴が開く胃穿孔や、上部消化管出血腎障害などがあげられます。他にはアスピリン喘息と呼ばれる、アスピリンを含むNSAIDsによって誘発される喘息の発作も存在します。アスピリン喘息は成人喘息の4%10%を占めており、そんなに稀な症例ではありません。30代から50で発症することが多いのですが、注意しなければならないのはアスピリン喘息と知らずにただの喘息として対応してしまうと致死的な発作を招き医療事故に繋がる可能性もあるということです。


NSAIDs以外の痛み止め/Tylenolと肝臓毒性

またNSAIDsには分類されないものの、NSAIDsと同じく解熱剤や頭痛薬などとしてアメリカでよく使われているものでTylenol(タイレノール)があります。Tylenolアセトアミノフェンを主成分とした薬で、NSAIDの薬に比べると抗炎症作用が弱いために厳密にはNSAIDsに分類されません。より強力な痛み止めのPercocetVicodinは処方箋でしか手に入らないものですが、アセトアミノフェンとモルヒネのようなオピオイド系の成分を混ぜた薬剤となっています。

Tylenol2000年から日本でも販売が始まっているのですが、その主成分であるアセトアミノフェンはNSAIDsに比べれば消化器官系に与えるダメージは少ないものの、肝臓へのダメージが懸念される成分です。実際にアメリカにおいて急性肝不全で病院に運ばれてくる患者の実に40%はアセトアミノフェンの過剰摂取によるもので、もちろんそれが一番の理由です。具体的にどう肝臓に悪いのかというと、アセトアミノフェンそのものには肝臓毒性はないのですが、その代謝物質であるNAPQIに高い肝臓毒性があり、肝細胞を破壊する原因となります。NAPQIは本来グルタチオンによって無毒化されるのですが、何らかの理由でNAPQIが体内で大量に生産されたり、グルタチオンが枯渇して無毒化されなくなると、NAPQIが体内に蓄積されることによって肝細胞が壊死し肝障害を引き起こします。

特に危険なのはアルコール摂取に伴うアセトアミノフェンの摂取です。アルコールを摂取するとNAPQIの代謝に関与するCYP2E1という肝臓の酵素の活性が高まり、普段より大量のNAPQIが産生されることになります。またアルコールだけでなく、カフェインとの併用でもNAPQIの産生が3倍になるという研究もあります。したがって酒はもちろんカフェインを含むコーヒーやお茶と一緒にアセトアミノフェンを摂取すると、体内でのNAPQIの産生が高まって肝障害のリスクは一気に上がるといえます。グルタチオンはNAPQIだけでなく抗生物質やその他多くの毒物を解毒するのに必要な栄養素であり、長期間の薬の服用によって枯渇する恐れがあります。その状態でアセタミノフェンを服用すればNAPQIが無毒化されずに体内に蓄積して肝障害を引き起こすリスクは一気に高まるといえます。


痛み止めとの付き合い方

薬はどんなものであれ必ず肝臓、腎臓に負担をかけ、またその代謝のために体内の栄養分を消費します。NSAIDsはそれに加え胃腸など消化器官系にダメージを与えます。急性の痛みを抑えるために一時的に痛み止めに頼る必要がある場合はあるかもしれませんが、慢性の痛みに対して痛みの原因を見つけ出して取り除く努力をせず、長期にわたって痛み止めを服用することでしのぐような対処療法は身体にとって何の利益もありません。

まず安易に痛み止めに頼らないこと、必要であれば必ず用量を守り、水で服用すること。特にアセトアミノフェン系の薬を飲むときは酒やコーヒーやお茶、エナジードリンクなどのカフェインを含んだものは避けることを心がけてください。

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